第4回 胃の組織学的解剖

胃の勉強をする機会がありました。当時の内容ではありますが、その記録を残しておこうと思います。意外にもかなりボリュームがあるので数回にわけて掲載します。カテゴリの「胃」を参照して下さい


目次


 

 

胃壁

胃壁は内腔面より、粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層(漿膜下組織)、漿膜からなる。

深達度の説明において、胃壁は解剖学的に粘膜層 (粘膜筋板を含む)、粘膜下組織、固有筋層、漿膜層 (漿膜下組織と漿膜表面) の 4 層に区分している。

 

 

胃粘膜

組織構造と機能の面で異なる 3 種類の粘膜がある。
口側から噴門腺粘膜、胃底腺粘膜、幽門腺粘膜となる。これらは胃に固有の粘膜であることから、固有腺粘膜と称され、腸上皮化生粘膜とは区別されている。

それぞれの領域は、肉眼的解剖にほぼ一致し、胃底腺粘膜領域が最も広く、次いで幽門腺粘膜領域が広い。
胃底腺粘膜と幽門腺粘膜が接し、両者の組織構造が混在して認められる領域を腺境界あるいは中間帯という。
中間帯粘膜の幅は個体差が大きく、体部側(胃底腺粘膜側)では胃底腺が、幽門側(幽門腺粘膜側)では幽門腺が有意に観察される。

噴門腺粘膜は、重層扁平上皮である食道粘膜と接している。噴門腺は幽門腺と極めて類似しているが、幽門腺粘膜と比べると、腺管密度が低い。

また、食道の粘膜固有層にも噴門腺が見られるが、胃噴門腺と区別して食道噴門腺と称される。

一方、食道腺は食道の粘膜下層に存在し、導管が粘膜筋板を貫いている。

 

胃底腺粘膜

表層の約 4 分の 1 に腺窩上皮が、深部約 4 分の 3 に副細胞、壁細胞、主細胞からなる固有胃腺が認められる。

副細胞は腺頸部近傍に多く見られ、壁細胞は中部に密集し、主細胞は腺底部に多い。副細胞は粘液性頸細胞ともよばれ、細胞質内に粘液顆粒が充満し円柱状である。これら 3 つの細胞はいずれも幹細胞から分化したものである。

 

幽門腺粘膜

表層の約 2 分の 1 に腺窩上皮が、深部 2 分の 1 に幽門腺が認められる。
胃底腺と比べて幽門腺は群をなして配列していることが多い。時々、少数の壁細胞も見られる。

なお、胃の上皮は単一管状腺管や分枝管状腺管で構成される。

腺窩上皮や固有腺とはひとつの腺管の部分的な名称である。腺窩上皮は表面に近いほど表面上皮の形態に近く、深部では幹細胞に移行している。
幹細胞は、表面に近い腺窩上皮の細胞と比べると丈 が低く、ヘマトキシリンで濃染する核を有している。


上皮を新生する能力があり、表面上皮や胃腺に分化する機能を有することから、本細胞が配列している腺頸部を増殖帯と称する。

 

粘膜筋板

粘膜と粘膜下層を境する平滑筋の層で、筋の伸縮により粘膜表面の凹凸に関係する。

近傍にはリンパ濾胞が観察されることもある。内輪筋と外縦筋の 2 層に分けることができ、最小動・静脈やリンパ管が粘膜筋板を貫いている。

 

粘膜下層

粘膜下層は疎な結合織で、線維細胞、膠原線維、弾性線維と大小の動静脈、リンパ管、神経叢などからなる。

また、少数のリンパ球や好酸球も観察される。

 

固有筋層

固有筋層は、内斜筋、中輪筋、外縦筋の 3 層からなり中輪筋が最も厚い。

内斜筋は食道の内層筋と連なり、胃上部の前後壁を走行する。中輪筋は、幽門輪の部分で発達し幽門括約筋となる。外縦筋は、食道の外層筋と連なり特に小彎、大彎部を胃の長軸方向に走行する。中輪筋と外縦筋の間には、Auerbach 神経叢がある。

 

漿膜

漿膜は胃の最外表を覆う一層の立方上皮で、腹膜表面を覆う中皮細胞と同じ細胞で構成される。

 

漿膜下層

漿膜下層は薄く疎な結合織である。

 

 

 

 

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