第5回 胃粘膜の萎縮と腸上皮化生


胃の勉強をする機会がありました。当時の内容ではありますが、その記録を残しておこうと思います。意外にもかなりボリュームがあるので数回にわけて掲載します。カテゴリの「胃」を参照して下さい。


目次


 

 

胃粘膜の萎縮

粘膜上皮が減少したり消失したりする現象を胃粘膜の萎縮という。

胃底腺や幽門腺などの胃固有腺の数や密度の減少を指すことが多い。
臨床的には、慢性萎縮性胃炎として観察され、粘膜の炎症に続いてみられる胃粘膜の形態変化である。組織学的には、固有腺の密度や腺窩上皮と固有腺が占める面積比により判定される。

萎縮は年齢とともに強くなり、固有腺の萎縮とともに粘膜固有層の炎症細胞浸潤、浮腫、リンパ濾胞、平滑筋の増生が種々の程度に認められる。

一般的に、幽門腺粘膜は胃底腺粘膜と比べて萎縮性胃炎を起こしやすく、胃の肛門側から口側方向に萎縮が進行する。
胃底腺の萎縮により粘膜ひだが減少ないしは消失するが、これは粘膜を構成する腺管密度の低下に由来していると考えられる。
逆に、幽門腺粘膜には萎縮が認められず、胃底腺粘膜にびまん性の高度の萎縮が認められる場合もある。

悪性貧血で見られる萎縮はこのタイプである。この場合、胃底腺粘膜の炎症細胞浸潤が乏しいとされる。

 

 

腸上皮化生粘膜

胃の粘膜に腸上皮に類似した粘膜が認められる場合があり、これを腸上皮化生粘膜という。

その組織学的特徴は、吸収上皮、杯細胞およびパネート細胞である。吸収上皮は遊離面に刷子縁を有している。
杯細胞は、粘液顆粒が細胞質内に充満して杯状に丸く腫大した細胞である。パネート細胞は、主に腺底部に認められる。
細胞質内にはエオジンに染まる顆粒を有している。このパネート細胞を有する腸上皮化生を完全型、パネート細胞のない腸上皮化生を不完全型と称する。

幽門腺粘膜の小彎側、および幽門腺粘膜と胃底腺粘膜の接する部位 (腺境界) 近傍の幽門腺粘膜が腸上皮化生の初発部位であり、
多中心性に発生した腸上皮化生粘膜は幽門前庭部の前後壁および胃底腺粘膜へと漸次拡大していくと考えれれている。
その程度は、年齢が増加するに従って著明となる。

 

F境界線とf境界線

 

萎縮粘膜と非萎縮粘膜の境界は,萎縮境界線と呼ばれ,口側からみて腸上皮化生のない胃底腺粘膜領域の限界線をF境界線,
胃底腺粘膜が巣状に出現する領域の限界線をf境界線と定義され,その間の腺が混在する領域を中間帯(萎縮移行帯)という。

『胃と腸』用語集 2012 HTML版)より引用

 

 

 

 

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