第8回 胃疾患質的診断にむけて


こんにちは。胃の勉強をする機会がありました。当時の内容ではありますが、その記録を残しておこうと思います。意外にもかなりボリュームがあるので数回にわけて掲載します。カテゴリの「胃」を参照して下さい


目次


 

 

 

質的診断にむけて

疾患には、腫瘍性疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、変性疾患、奇形がある。

腫瘍とは、生体の制御に反して自律的に増殖した細胞の集団のことであり、新生物と同義である。
これを構成する組織が腫瘍組織であり、構成する細胞が腫瘍細胞である。他律的な増殖は過形成として区別される。

ただし、自律的な増殖をきたしているのか、他律的な増殖をきたしているのかを区別することは難しい。

一般に、増殖が穏やかで宿主に悪影響を及ぼさないものを良性腫瘍。

浸潤や転移などを示し宿主の正常な臓器の機能障害を引き起こしたり、全身の栄養障害を招き、最終的に生命をおびやかすものを悪性腫瘍と定義されている。

また、発生起源からは上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍に区別されている。

胃においては粘膜を構成する上皮、すなわち腺管を構成する細胞から発生する腫瘍が上皮性腫瘍であり。

それ以外の組織から発生する腫瘍が非上皮性腫瘍である。

 

胃癌は、胃粘膜の上皮細胞から発生し、生体の制御とは無関係に発育する悪性腫瘍と定義することが出来る。
癌を構成する組織が癌組織であり、構成する細胞が癌細胞である。

 

 

 

腫瘍性・非腫瘍性の判定

質的診断では、所見 (群) が示す病変が腫瘍か否かの判定が求められる。

腫瘍とは、増殖調節機構が正常に機能せず自律的に増殖した細胞 (組織) 集団であり、肉眼的には周囲とは異なる形態を呈し、周囲組織との間に境界が認められやすい。

正常組織とのかけはなれの強い腫瘍ほど、肉眼的にも組織学的にも区別されやすく、塊状ないしは圧排性の発育を示す腫瘍ほど限局性の塊として認識しやすい。

この現象は、腫瘍に共通したことがらであり、胃癌であっても悪性リンパ腫であっても粘膜下腫瘍であっても、基本的には同じである。

 

X線的な質的診断に関して

日常的に腫瘍性病変と区別が求められる疾患は、胃炎性の変化である。胃炎性の変化は組織学的に、

1) 炎症細胞浸潤

2) 腺組織と間質の変性、

脱落 (消失)、増殖に特徴付けられる一種の生体反応であり、健常組織の再構築所見と捉えることができる。

境界を形成することは稀で、軽微な形態変化が非限局性、散在性に認められることが特徴である。

限局的な局面を形成している“たこいぼびらん”であっても、多発していることが多い。

 

 

上皮性・非上皮性の判定

上皮性・非上皮性の判定は、腫瘍性・非腫瘍性の判定と共に行われることが多い。

特に胃癌の診断では、上皮の変化の有無に着眼して読影を行う必要がある。
臨床的には、粘膜層を上皮とみなして判定することが多い。

粘膜層には、腫瘍性、非腫瘍性を問わず様々な変化が認められる。
腫瘍組織の隆起性増殖、腺窩上皮や固有腺の過形成、隆起型の腸上皮化生などは隆起として認められる。

陥凹型胃癌をはじめ、炎症性粘膜欠損であるびらんや萎縮粘膜は、陥凹として認められる。

読影診断では、隆起や陥凹に由来するはじき像やたまり像の輪郭や表面をよく見て、上皮に特徴的な凹凸や模様が確認できた場合に上皮性変化が有ると判定する。

同一の大きさと形状を呈する腫瘍が粘膜 (上皮) に存在する場合と、粘膜以外 (非上皮) に存在する場合の図を示した。粘膜に発生した腫瘍は輪郭、表面形態ともに微細な凹凸所見が表れやすい。

 

 

良性・悪性の判定

形態学的な良悪性判定の指標は、腫瘍の大きさと形に求めるしかない。

一般的に良性腫瘍と比べて、悪性腫瘍では腫瘍組織の増殖力が強く、増殖の方向も不均衡であることから、大きくいびつな形となりやすく、腫瘍の進展に伴い周囲組織には反応性変化が表れる。

上皮性の悪性腫瘍である胃癌も同様である。

勿論、胃癌の組織型や肉眼形態は様々であるとともに、発育進展形式が異なり、また背景粘膜の性状も異なることから表れる X 線所見もまちまちである。

しかしながら、やはり悪性腫瘍の特徴である不規則、不整、不揃いであるという形態的な特徴を拾い上げながら良悪性を判定する必要がある。

 

 

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