第6回 癌組織型による癌組織発生


胃の勉強をする機会がありました。当時の内容ではありますが、その記録を残しておこうと思います。意外にもかなりボリュームがあるので数回にわけて掲載します。カテゴリの「医療ー胃」を参照して下さい。


目次


はじめに

癌組織型による癌進展部粘膜の組織構築の差異を理解するには、癌のルーツ

すなわち癌の細胞発生ならびに組織発生について知っておく必要がある。

 

 

未分化型癌

未分化型癌は胃固有腺 (幽門腺、胃底腺、噴門腺) の腺頚部にある分裂細胞帯から発生する。

発生した未分化型癌は基底膜形成能に乏しく、細胞間接着因子の発現が障害されているので、腺管上皮内から固有粘膜の間質へ浸潤し、腺管を形成することなく周囲粘膜固有層の間質へびまん性に浸潤する。

癌は発生初期では粘膜表層 1/2 に限局している。径2mm 以下の極微小癌では表層ビランはなく、平坦である。極微小癌の大きさと肉眼形態からしても臨床的に経験することは極めて稀であろう。径 5mm 以下の微小癌では内視鏡的には褪色ないし微小ビラン、肉眼的あるいは X 線的には局所的な粘膜萎縮ないし微小ビランとして観察される。

やがて発育とともに癌量が増加し、びまん浸潤部の腺頚部は破壊され、健常腺管は萎縮ないし脱落に陥り、胃液酸度と相まって癌粘膜はビラン化を生じ、未分化型癌に特徴的な面、境界、ヒダ所見を呈する。

癌発生は多腺管性あるいは多細胞性と言われている。

稀に、腺窩上皮に類似した腺管を形成する胃型の分化型癌あるいは腺窩上皮型の胃癌と呼ばれる癌がある。

本型では構造異型が見られても細胞異型に乏しいという特徴があり、内視鏡的生検組織診断でも良性あるいは過形成性ポリープと診断されることがある。

また、陥凹型では表面が平滑ないし微細顆粒状を呈するので、存在診断をはじめ質的診断が難しく、隆起型では隆起表面が平滑に見えることから粘膜下腫瘍と診断されやすい特徴がある。

 

 

分化型癌

分化型癌は腸上皮化生粘膜の下 1/2 にある腸上皮化生腺管の分裂細胞帯から発生する。

癌は基底膜形成能ならびに細胞間接着因子の発現能があり、腺管形成 (芽出) あるいは正常細胞を置換しながら発育するが、置換発育よりも芽出発育が主体と考えられている。

周囲粘膜は未分化型癌に比べて腸上皮化生が高度な胃粘膜に存在し、低胃酸であることもあって、ビラン化傾向は弱い。
そのために隆起性発育が多くみられる。

 

 

癌組織型分類

癌組織型分類に迷う組織形態について。

胃癌粘膜進展部に観察される癌組織型は、基本的には腺管形成傾向の有無によって 2 つに分類することができる。

すなわち、健常腺管に近い形態を呈する癌を分化型癌、腺管形成傾向に乏しく、癌細胞がばらばらかあるいは索状配列を呈し、腺管を形成しても小型の腺管である癌を未分化型癌の名で表現・表記されている。

ところが、胃癌は肉眼所見だけでなく組織形態も多様であるために分化型癌と未分化型癌のいずれに分類したらよいか迷うことも少なくない。

それらの多くは腫瘍病理学の大前提に"発生した母地組織・細胞の形態・機能を多少とも模倣する"があり、
正常の胃粘膜上皮は腺管を形成するので胃固有粘膜から発生した癌も腺管を形成しない訳はなく、その頻度が少ないだけのことであるとしている。

そして、胃固有粘膜から発生した癌 (胃型の癌) で腺管を形成している癌には、

 

1) 腺窩上皮型腺癌と呼ばれている癌

2) 管状腺癌で立方状の小型癌細胞が形成している tub2 と呼ばれている腺癌の一部(中分化型)

3) 小型の腺管腺癌(低分化腺癌,por)

が相当する。

 

腺窩上皮型腺癌

腺窩上皮型腺癌は、乳頭状ないし羊歯状の大型腺管を形成し、構造異型は見られても、細胞異型に乏しいことが特徴で、
肉眼的には粘膜下腫瘍に類似した所見あるいは IIb 様の拡がりを呈することが多く、質的ならびに拡がり診断が困難である。

中分化型 (tub2) ないし低分化腺癌 (por) は、
粘膜下層へ浸潤すると未分化型癌の特徴的所見である繊維形成を伴う硬性型腺癌の形態を呈するとしている。

管状腺癌の中分化型 (tub2) の中には異型度、
つまり正常の腺管形態からの"かけ離れ"が低い癌 (低異型度の癌) がある。

これらでは生検組織診断で良悪性の判定に苦慮することが多く、臨床的には拡がり診断で問題となる。

胃型と腸型の識別は、形態だけでなく粘液染色や免疫染色による形質発現の態度を参考にして行なわれることもある。

 

 

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