第2回 胃の区分

 

胃の勉強をする機会がありました。当時の内容ではありますが、その記録を残しておこうと思います。意外にもかなりボリュームがあるので数回にわけて掲載します。カテゴリの「胃」を参照して下さい。


目次


胃癌取扱い規約における胃の区分

胃の区分には従来から多数の分類がある。
胃癌取扱い規約に定められた区分がよく用いられている。

本規約は、胃癌患者の病像を正確に記録し解析することで、胃癌の診断法や治療法などの向上が可能になるとの考え方に基づいて編集されており、胃癌原発巣の観点から占拠部位を

 

(1) 胃の 3 領域区分

(2) 胃壁の断面区分

に分けて記載することとしている。

すなわち、胃の大彎および小彎を3等分し、それぞれの対応点を結んで、

胃をU(上部)、M(中部) およびL(下部)の3つの領域に分け、E(食道)ならびにD(十二指腸) への浸潤も記載する。

また、胃壁の断面区分では、小彎、大彎、前壁、 後壁および全周を区分し、

これらを小(Less)、大(Gre)、前(Ant)、後(Post)、周(Circ) で表す。

ただし、胃のX線読影診断では所見や病変の位置を表現するために、別の区分が用いられることが多い。

 

読影診断における胃の区分

近年の読影診断において一般的に用いられている区分と各部の名称を示した。

ここでは、噴門部、穹隆部、体部、胃角、胃角、前庭部ないしは幽門前庭部および幽門前部を区別している。

各部の呼称に前壁、後壁、小彎、大彎などの壁在を表す用語を組み合わせて、所見や病変の位置を特定する。

より詳細に胃角部よりの前庭部や前壁寄りの小彎などと表現することもある。

 

噴門部

噴門部とは、胃の最も口側の部分をいう。
食道胃境界線から噴門腺の存在する上下2cmの領域を噴門部とする西らの定義が一般的である。
ただし、組織学的な噴門の存在領域をX線的に特定することは難しく、食道筋層と胃筋層の境界である食道胃接合部(EGJ)のX線的同定も同様に難しい。

胃癌取扱い規約第 14 版には,His 角を胃壁に沿って延長した線や胃大彎の縦走襞の口側終末部をもって同定するとの記載があることから、
この境界線から口側 2cm の領域を食道側噴門部、肛門側 2cm の領域を胃側噴門部と表現することが多い。

なお、タイミングよく撮影された食道二重造影像では、
扁平上皮である食道粘膜と円柱上皮である胃粘膜との境界 (食道胃粘膜接合部,EGMJ) 陰影が描出される。
なお、胃上部の二重造影像では胃の入口部が開いたり閉じたりすることによって、様々な所見を呈する、特に腹臥位第1斜位 (上部) 二重造影像における胃入口部の表れ方を閉鎖期、半閉鎖期、開口期にわけて明らかにしている。

すなわち、閉鎖期には噴門ヒダ間に造影剤が溜まることによって、放射線像の線状陰影が観察される。
半閉鎖期には、この線状分離像に His 角の接線像である半月状陰影が交叉して写し出される、閉鎖期や半閉鎖期の二重造影像では、食道胃粘膜接合部を示す不規則な波状の陰影が線状分離像の胃側に描出されることが多い。
開口期には、線状分離像は消失し半月状陰影のみがあらわれる、この時期には、食道胃粘膜接合部が直接的に描出されることは少ない。

ただし半月状陰影の起始部を結んだ仮想線近傍、すなわち仮想線の胃側 10mm 以内,食道側 5mm 以内の範囲に食道胃粘膜接合部があるとされる。

 

穹窿部

穹窿部とは、頭側の膨隆した領域である。

解剖学的には、背臥位で最も背側に位置することから胃底部とも呼ばれる。
立位では胃の下極、いわゆる胃角部付近を胃底部と呼ぶこともあるので注意を要する。

 

胃体部

体部とは、胃の中央部で口側から肛門側にかけて下行する広い領域である。

体部を3等分、口側より体上部、体中部、体下部と称する。この部の前後壁や大彎側には、蛇行した粘膜ヒダが観察される。
なお、粘膜ヒダの位置と形状は固定的なものではなく、胃の伸展具合により変化する。胃粘膜と固有筋層の伸展度の差、および胃粘膜を構成する腺管密度の差に起因すると考えられる現象である。X線検査や内視鏡検査では胃内の空気量を変えることで、切除標本では胃壁を引っ張る強さを調節することで、粘膜ひだの位置や形状が変化する。しかし、伸展を解除するとほぼ元の形状に戻る。

すなわち、不可逆的に変化することはごく稀であるし、進展前後の粘膜ひだ形状は相似している。
これは、胃粘膜や固有筋層の体積と腺管密度が一定であることと、胃壁を構成する血管、リンパ管、神経組織が、その本来の役割とは別に支持的な役割を果たしていることが要因と考えられている。

 

胃角部

胃角と胃角部は使い分ける必要がある。

胃角とは、体部小彎に続く右上方への屈曲部を指す。胃角部とは胃角から大彎側に拡がる扇形の領域である。
他の部位と同様に、胃角部の境界線も明確には定義されていない。

 

-

© 2024 いっかくじゅうネット Powered by AFFINGER5